土曜の朝、眠い新宿

真っ直ぐにこの愛を伝えても
彼はきっと笑顔で「ありがとう」と言うのだ。
その後に続く言葉はどうであれ、
彼は真っ直ぐ目を見てそう言うに決まっている。
だから私はいつも素知らぬ顔で笑う。
8ヶ月に及ぶ私のポーカーフェイスには
幸か不幸かまだ誰も気付いていない。



何でもないたった一言のメールでぴょんぴょん飛び跳ねたり(足をぶつけてアザ作成)
何気ない仕草を思い出してはニヤニヤしたり(はたから見たらノンストップ妄想変態)
出かける前には何回も服を着替えてバタバタしたり(その結果大事な何かを忘れ物)
何てことない瞬間を鮮度まるごと真空パックしたり(常に足りないジップロック
そんな私のひっそりとした活動は全部地下で行われている。
だって私は秘密結社桃子。
私が知ってるほんとにかっこいい一面も秘密。
ほんとはいちばん近くにいたいと思っているのも秘密。
大好きなのは知られてるけど、一応秘密。
自己の中心で愛を叫んでみる。



どうして好きかと訊かれても答えられないから訊かないで。
頭で考えて納得して好きになったわけではないし、
好きなところはたくさんあっても、
それは好きな理由ではないのだ。
恋は「する」ものじゃなくて「おちる」ものなんだというけれど
まさにそう、ある日突然雷に打たれたようなものなのだ。
その瞬間から恋心はひとりで膨らみ始める。
その成長ぶりたるや、見習いたい程に逞しい。
自己中心的に愛を叫ぶのは愛かエゴか。
私の答えは「エゴ」だ。
だから私は秘密結社桃子。




眠い目をこすりつつ、
妄想恋愛に気を紛らわせてみたところで
私の髪はまだ伸びない。
意外としつこい自分を今発見。