イレズミねぇさん

「なんで入れようと思ったの?」




私の肌を見た初対面の人にかなりの確率で言われる言葉である。
そう訊かれるたびに私は返答に困ってしまう。
だって、



いつか入れるんだろうと
ごく自然に、
しごく普通に思っていたから。




そうとしか答えられない。
いつからか、とか
何がきっかけで、とか
そんなことはわからない。



記憶を遡ってみたところ、
まだあどけない桃子@小学生、
ぬり絵の中の人に極彩色のTATTOO(のつもりの落書き)を書き込み、(主な被害者はキキララとミンキーモモ
自らが描く女の子の身体には必ずTATTOO(のつもりの…)が入っていたものだ。
今思えば、
親はその時点で私の身体がこうなることを予測しておくべきだったのではないか。
なんて開き直りたくなったりするものの、あまり親と触れ合った記憶のない私。
ちなみに当時の家族親戚友人知人に刺青保有者は1人もいない。
マセてたというかアングラというか、
とにかく全く可愛げのない非健全な子供であった桃子。




いつか入れるんだろう
そう思って大人になった桃子、
それが
いつ入れよう?
そう変わるのもこれまた自然な流れである。



・自分で働いてちゃんと生活できるようになるまでは入れてはならない
・入れる以上はTATTOOで他人に迷惑をかけてはいけない
・親には一生隠し通さねばならない


などと自分の中での絶対条件がいくつかあったので、
意外とその「いつか」は遅かった。
25歳、
桃子TATTOOデビュー。
見えないところから入れ始めたものの、
あっという間に腰も背中も胸も空きがなくなり、
気付いたら杉並区まで右腕を差し出しに行ってた私。
最後の砦、腕1本はREIさんの前にあっさり陥落。



私、身体に金かけてる。(文字通り)
でもどれもこれも私の宝物だもの。
大好きなアーティストが私の為に描いて彫ってくれた大切なものだもの。
毎日キスしたいぐらいだが、
半分以上は鏡越しにしかできないのが残念である。





熱心な読者の皆様には信じられない事かもしれないが、


私、
TATTOOが完成するまでは一切アルコールは飲まない。




体内に入ったアルコールによって血行がよくなりインクの定着が悪くなるため、
一般的には施術前日と当日は飲まないのが鉄則なのだが、
私はTATTOOの大小問わず、
打ち合わせの段階から完全にカサブタが剥がれ落ちるまで飲まない。
彫ってもらう側も万全のコンディションで臨むのがマナーであり、
彫ってもらったものをきれいな作品として仕上げるのが自分の仕事だと思っている。
私にとってはそれがアーティストへの礼儀というか、
これからその絵と共に生きていく覚悟と禊のようなものなのかもしれない。
よって、
右腕は構想から仕上がりまで、1年間1アルコールも飲まなかった。
少なくとも私がアル中ではないことをご理解いただけただろうか。
しかし、アルコールを絶つことよりもさらにつらいものがある。
それは、
タバスコだ。
アルコール同様、刺激物も厳禁である。
たぶん日本での年間タバスコ消費量ダントツ上位の私にとって
タバスコ絶ちは悶絶ものである。
1ピースオブピザ、0.5タバスコ。(単位:本)
1ドリア、1タバスコ。(単位:本)
ナポリタンやらオムライスやら卵サンドやらボンカレーやら、
すでに目的はタバスコである。
タバスコをぶっかけ、タバスコに浸し、タバスコに溺れるダメな私…
ならばタバスコとは相性の悪い和食を食らっておけ、この味覚音痴
そうお思いの方もいるだろう。
あきまへん、
あきまへんのどす。
和食となれば七味・一味の出番となるわけですよ。イエス、THE刺激物。
ご存知の方もいると思うが、私はmyブレンド七味を常に持ち歩いている。
飛騨高山のとあるおばちゃんが毎年私の好みどおりにブレンドしてくれるやつだ。
味噌汁でも和え物でも冷奴でもラーメンでも振りかけまくるぜ唐辛子。
バンザイ唐辛子!ビバ唐辛子!
そんな私、明らかに味覚音痴と思われるだろうが、
辛さを感じるのは痛覚であるからして、
完全なる痛覚麻痺と思われる。




「なんで入れようと思ったの?」と並んで訊かれるのが
「痛かった?」
である。


これまた返答に困ってしまう。


だって、






痛覚が麻痺しているから。







…お粗末でした。