夢を見たのです。

僕は月に恋をした。



夜を照らす光。
きらきらと瞬く星でも
七色に点滅するネオンでもない、
静かに夜を見下ろす月。




月は黙って闇を照らす。
その妖艶な輝きは
昼間の姿からは誰も想像できなくて、
さっきまでもそこにあったことに
誰もすぐには気がつかないんだ。



それなのに僕は、
無数に輝く星たちには目もくれず、
雲ひとつない夜空で
その輝きに吸い込まるように
出会って数分で恋に落ちてしまった。



彼女は月。
僕の闇を照らす。
見ないふりをしたくても
逃げ出したくても
大体はその光の下に晒されてしまうんだ。
僕が強くても弱くても彼女は変わらない。
僕はそんな彼女に恋をした。



僕は彼女を独り占めしたくて、
僕のこの腕で抱きしめたくて、
僕だけの月にしたくて、
動いた。
考えた。
回った。
泣いた。
燃えた。
想った。



彼女の答えはいつも同じで
「…私、恋愛に向いてないから」
そう言う彼女は
眉ひとつ動かさない。


僕が知る限り、
彼女は平均より有能な女性だけど、
こんな時、ほんとはバカなんじゃないかと思ってしまう。
恋愛に向いてなくても、
僕には向いてる。
僕の光はキミを輝かす。
僕だけがキミを白銀色に輝かせる。
そんな単純なことに気がつかない彼女が愛おしくて仕方がないんだ。
僕の月。




僕は月に恋をした。