バカな子孫

私はこれまで死に物狂いで何かを頑張ったことがあるだろうか?
死んでるように生きてた時期はあったけど
これだけはやりきったって言い切れることがない。
情けないけれど、まだない。
数年前、
ある人に「回り道する人生を送る」と言われたことの意味がようやく腑に落ちた。
「回り道した結果、普通でいいんだ、ありのままでいいんだってことに気付く」
そういうことらしいけれど、
振り返ってみてもまさにその通りで
私は回り道のエキスパートかもしれない。



私は放蕩娘だ。
31にもなって親にはまだ心配をかけ続け、何度も泣かせている。
大学まで出してもらって何してるんだと我ながら思う。
22歳ぐらいまでは多少よくできた子だったと思うが、
決して自慢の娘ではないはずだ。
そんな私に親が望むことはただひとつ。
何かで有名になることでも、
今の10倍稼ぐことでもない。
それは、


婿養子を連れて実家に帰り、跡取りとなる男の子を産むこと。


これだけ。
耳が痛い話だけれど、リアルな話。



もう何年も前から親と話すといつもこの話になる。
父親譲りの頑固な私は
自分が納得できないことには絶対返事ができない。
その場しのぎの返事すら出来ない。
私のこの態度が父親の逆鱗に触れ、
子供の頃から何度もどつきまわされたけれど
やっぱりイエスとは言えない。
あの家で育ち、親の姿を見てきただけに
私に求められてることはよくわかる。
田舎の本家のシステムが理解できるだけに葛藤。
一族の中の最強の異端児がたまたま本家の長女だった…では済まない話。



だけど、
どうしてもこれから結婚する自分が見えない。
母親になる自分も見えない。
これだけは約束できないんだ。


親はいつか死ぬ。
そして私も死ぬ。
だから
このままじゃだめだと思う。
死に物狂いで何かをする時期が近付いてると思う。



『限られた時間の中にいるんだ こんなところじゃ終われないんだ』
この言葉はもう何年も前からずっと頭の中心にあるというのに
何がしたいんだ、私は。
明日死んでも悔いはねぇ、
毎日そう思って生きてるけど、それはきっと自分だけなんだ。
自分の人生だけど、
自分だけのものじゃないんだ。
生きることの意味を問われ、
「死ぬため」と即答する私を持て余す親の顔が目に浮かぶ。
つくづく情けなくて申し訳ない気持ちになるけど、
嘘はつけないんだ、私。