春だもの

本日の食品レジの待ち時間


12:00 ペプシ1本に15分
17:30 ビーフジャーキーとお茶に10分



あぁ私、我慢できる子になってる。
今まで
5分が限界でした。






っつか、
みんなどんだけ花見?
我が職場がインするショッピングセンターは街中から結構な外れに位置している。
目の前にでかい公園。
最寄駅に超でかい公園。
目と鼻の先に某大学キャンパスと某大医学部とその病院。
さすが郊外型、
花見スポットと春めいた若者と入院患者多数、オーイエー。
酒、ロックアイス、オレンジジュース、ウーロン茶、オードブルセット、寿司(桶タイプ)、パックに詰められた揚げ物、スナック菓子、紙コップ、紙皿…
ここ数日、20台は設置された食品レジたちがスキャンしたものの大半はこれらだと思われる。いや、これらに違いない。
このスーパー、
この店が日本でいちばん売ってる(…らしいっスよ)理由が何となくわかった気がする春。





本日私がセルフレジに並んでいると
真後ろに1組の男女。
付き合い始めというよりは
お互いに好意を抱いていることには気付きながらも行為に至るきっかけを探している、そんな感じ。



秋葉系とでもいうのか、
化粧っけのないメガネ女子(推定年齢:20歳)と
語尾は「〜っす、ハハ」「〜っすか?ハハ」という男子(推定年齢:19歳)がぴったりくっついている、
私に。



誰にでも侵されたくないパーソナルスペースというものがあるはずだが、
彼らはお構いなしである、
私のパーソナルスペースに。



そして、
友達以上恋人未満、
しかもきっかけ待ちの間柄によくある他人からしたら死ぬほどどうでもいい話を聞かされる、
私が。




死ぬほどどうでもいい話を
他人の真後ろに立ち、
馬鹿でかい声でしゃべり倒すこの2人が
ルフレジに10分並んでまでスキャンしたいものは
コアラのマーチ1点。


女「ごめんね、コアラのマーチ1個に」
男「もっと買いますか?」
女「んー、今日はこれで我慢するからいいよ」
男「俺買いますよ、何がいいっすか?」
女「これでいいんだって。ねぇセルフレジって何?誰がするの?」
男「自分でレジするからセルフなんすよ」
女「なるほどー。あたし初めて見るんだよね。やってみたい」
男「やってみますか?てゆうかできるんすか?」
女「できんけどー、〇〇(どうやら男の名)機械強いじゃん」
男「俺いたら完璧っすよ、やったことないっすけど、ハハ」
女「〇〇って楽しいよねー」
男「愉快なやつとはよく言われますよ、ハハ」
女「やだー。愉快になってきたー」
男「俺も愉快っすよ、ハハ」




そもそもセルフレジに機械強いも弱いも関係ないのだが
「俺」がいたら完璧にコアラのマーチの購入手続きはできるようだ。
こんな調子で愉快な彼らは延々しゃべりつづけている、
うざめのテンションで。
ほんとに全く聞きたくないのだが、
今ここで私が両手で耳を塞いだら、
せっかく愉快な彼らに不愉快な思いをさせ、
これから何かしらの行為に及ぼうかという秘めた決意に水を注すことになるかもしれぬとひとり我慢する私。



女「△△(どうやら共通の知り合い)ってさー何言ってるか全然わかんないよね、バカじゃん?」
男「あいつの国語力、ハンパなくヤバイっすよ、現国40点っす」
女「まじ?現国なんてノー勉で80当然じゃん」
男「あいつノー勉で20ぐらいっすよ、漢字しゃべれないんすよ、ハハ」



レジに10分並んでいるこの事実に、
パーソナルスペースを侵されたその事実に、
他人の国語力について語る若者の国語力破壊という紛れもない事実に、
すでにイライラしている、
私。




女「ねぇこれ買ったらどうする〜?」
男「どうしますか?どっか行きますか?」
女「んー、まぁ成り行きな感じ〜?」
男「とりあえず成り行きな感じっすね、ハハ」
女「あたしらさーテキトーに歩いても絶対どっか着くよねー、すごくない?」
男「そうそう、絶対どっか着くっすよ俺ら。最強っす、ハハ」



桃子「誰でもどっかには着くっちゅーねん!!」



男・女「………っすね」





こうして桃子はビーフジャーキーと玄米茶を購入した。