鳴り止まないステップ


自転車をさ、
買い替えようと思ってる。
ここ2年ぐらいずっと。
前輪タイヤの交換に迫られたり、
ブレーキワイヤーの交換に迫られたり、
カゴをハンダづける必要に迫られたり、
後輪タイヤの交換に迫られたり、
酸性雨に溶けたサドルの補修に迫られたり、
前輪タイヤの交換に迫られたり、
カゴを撤廃する必要に迫られたり、
鍵を失くしたりするそのたびに、
今度こそ買い替えようと思っている。
思えばこいつとはかれこれ8年程の付き合いだ。
その間にこいつに乗せた男子も何人かいたり、いなかったり。。。



知人に言わせると
どうやら私、結構な頻度でタイヤを交換しているようだが、
これは走行距離によるものだと認識している。
ここだけの話、
京都桃山店へは雨でも雪でもチャリ通勤だった。(片道25分)
ここだけの話、
クレームやら下見やらポスティングやらには私の自転車をスタッフ全員で乗り回していた。
ここだけの話、
難波へ行く時はいつも山科から六地蔵までチャリで行き(要30分)
そこから京阪電車に乗っていた。(もちろん深夜にまた30分かけて帰宅)
ここだけの話、
昔の彼氏の家までは片道1時間かけてチャリっていた。
ここだけの話、
チャリがあればどこまでも行けると思っていた。
そんな自分が大好きです。テヘ。


そして本日、
名古屋市千種区の某ショッピングセンターで働く桃子は
休憩時間に所用を思い出し、一度自宅へ戻ろうと思ったところ、
なんと後輪タイヤがパンクしていた。
寒空の下、後輪の空気がすっかり抜け、
しょんぼりと肩を落としたかのようなmy自転車を見つめしばし思案した挙句、
小雪舞い散る名古屋市を自らの足で走った。
桃子は走った。
往復4km。(およそ)
今さらだが、RATLC@2ndLINEで負傷し今もしつこくズキズキ痛む左足、
さらに相当体重が増加しているわりに意外と普通に走れる自分にビックリし、
健康のために今後は走って通勤しようかとも思ったが、
その考えは一瞬にして
はい消えた。(なるほど・ザ・キンキン)
だって、仕事終わりに今池とか池下とか新栄とか
チャリなかったら絶対間に合わん。(結局LIVE基準)
この名古屋で自転車がないというのは恐ろしく不便なのであって、
修理するか新しく購入するか、その後の勤務時間に頭を悩ませることになる。





30分後、
桃子はあっさり館内の自転車屋に痛手を負ったmy自転車を持ち込んだ。
元々中古パーツの寄せ集めで仕上げたチャリであったため、
確かにサビも出てるし、
変速とか全く使ってないし、(常に“速”のまま)
ペダルとかグリップとかフェンダーとかいろいろボロボロやし、
ダサくはないけどかっこよくもないし、
至って無難なアイボリー×シルバーのツートンカラーやし、
どこと言って自慢できる点はないけれど、
全然乗れるし、
27インチやし、
パーツパーツで見たらわりかし一流メーカーやし、(ボロい)
これといって気に入らんところもない。
し、
何よりこのままスクラップされるのかと思ったら
なぜかムショーに抱きしめてやりたくなったのだ。
24歳の桃子も
27歳の桃子も
30歳の桃子も
こいつと一緒に京都の町を疾走していた。
笑いながら、
泣きながら、
唄いながら、
叫びながら、
時にじゃがりこガリガリ貪りながら、
毎日表情を変える山科川を見ながら、
満開の桜を見ながら、
夕立を全身に浴びながら、
宇治川や琵琶湖の花火を見ながら、
醍醐山の紅葉を見ながら、
乾いた冬の空に瞬く星を見ながら、
いつもこいつと一緒にいたのだ。(一緒に職質に遭った回数、数知れず)
センチメンタルジャーニー桃子は
小雪舞い散る中、ひとり静かに胸を熱くし、
すべてにおいて事務的な自転車屋の店員に熱く説明をする。
桃子「この子は京都からやって来たので愛知県で防犯登録はしていません」
店員「…はい」




ジャーニー桃子、
センチメンタルに溺れ、
後輪タイヤの交換ついでに奮発して新しくカゴを取り付け、
この際サドルも交換してやりますかと太っ腹。
諸々の補修も込みで総額8千円也。
またしてもしばらくこいつに乗り続けることになる。
よろしく頼むぜ相棒。
ラララララ。