まともじゃいられない

毎度おなじみ家具屋です。
お客様とどうもアイコンタクトがうまくいかない。



いやね、
本日ご成約のお客様、
推定年齢20代後半〜30代前半女性。
スッピン。上下スウェット、持ち物は財布オンリー。
いや、そんなことはどうでもよくて、
なんか目が合わないというか、視線がまるで交わらない。
決して無関心ってわけじゃなく、
どっちかっつーと興味津々な様子なのに
なぜか噛み合わない。
接客してても何か違和感。
すげー気持ち悪いの。
こちらが目を合わそうと思っても合わない。
ほらここ重要だから相互確認お願い、
そう思ってチラッとバチッと視線を送るも絶対合わない。
ならばジロリとまじまじと見てみるも、なぜか慌てて視線をそらすお客様。
さすがに同性でもスッピン見られちゃ困るということか。
否、ここはショッピングセンターである。
そもそも上下スウェットに財布ひとつではないか、
素顔のひとつやふたつ、いや3つでも4つでもこの際変わりはない。
噛み合わない私たちの小1時間、プライスレス。
そんな思春期の少年少女さながらのギクシャク感を経て何とかご成約となり、
オーダー用紙を記入し記入されながら彼女の視線の先を確認するも、
やはりいつまで経っても平行線。
決してお互いに拒んでる感じじゃないのに何この空回り。
何とか平静を装い、
対面する相手の視線の先をそれとなく追うとどうも上目使い。
―もしかして私の後ろに誰かいたりする?
―お客さん何か見えちゃう人?
―それとも今日の化粧が3分仕上げってばれた?



何にせよ落ち着かないことこの上なし。
しかしそこは仕事、
納期を確認し、商品に対する基本説明を行ない、
レジに向かい精算する私をやはり凝視する彼女。
滞りなく一連の業務を済ませ、
お見送りの段になって意を決した面持ちで彼女が口を開いた。




「前髪、超真っ直ぐですね」




は…い。




そこから
カットは毎日してるのか?
朝のセットはどうしているのか?
どれぐらいのペースで美容院に行くのか?
シャンプーはこだわりがあるのか?



あれほど噛み合わなかった小1時間が嘘のように
矢継ぎ早に飛び交う質問。







新コーナー『今日の1冊』

駅長マロン
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読みたい本はいっぱいあるのに…