忍者

山崎さん→「やまさん」
田口さん→「ぐっち」
渡辺さん→「なべちゃん」
橋本さん→「はしもっち」
坂田さん→「あほ」(関西圏のみ?)
小池さん→「ラーメン」
徳川さん→「幕府」
などと、姓によってあだ名の相場は概ね決まっていると思われる。
当人が強烈なキャラクターの持ち主であった場合は
姓も名も飛び越えて、
本意不本意関わらずそのキャラクターにちなんで命名されることもあるが、
往々にしてあだ名というものは名前に由来していると言えよう。
恋人同士が互いを呼び合う愛称はとてつもなく恥ずかしいものがほとんどであるが、
恋愛中の彼ら彼女らにとって世界は2人のためにあるようで、
その事実には当分気づくことはない。



私の名はといえば、
どうやら姓も名もあだ名になりにくいようで、
幼い頃からあだ名らしいもので呼ばれた記憶がない。
同年代の男子からは「きょっ京都さん」「も、桃子さん」
どうやら少しばかり近寄りがたいようで、
その吃音っぷりから
迂闊に呼び捨てにでもしようもんならどんな制裁が下されるのかといった畏怖の念を感じる。
30代40代の男性からは決まって「京都ちゃん」となるのだが、
カーディガンを羽織る業界人に憧れたバブリーなお年頃の方々故、致し方ない。
プロデューサーかっつーの。
…なんて思ってはいない。
思えばかつての恋人たちにも普通に名を呼ばれるのみであった。
働き出してからはなぜだかいつも店長であるため、もれなく「店長」と呼ばれている。
そんな私だが、
過去に京都桃子にあだ名をつけようと提案してくれた人が1人だけいる。
熟考に熟考を重ね、一休さん並みの閃きを得たと思しき彼女の口から出たのは
「にんにん!!」


…まぁ確かに。
わからんでもないのだが。


結局その場に居合わせた者7名、
一度も私をそう呼ぶことはなく、流行りも定着もしなかった。
現在となってはミクシやらなんやらのおかげで
逆に本名を知られていないことの方が多くなってしまったのだが
10年経っても相変わらず彼女は私を「にんにん」と呼ぶ。