枡梧と打田と京都桃子

出勤前に地下鉄の忘れ物センターにこないだ忘れた服を取りに行く。
せっかくやからと烏丸御池から四条寺町あたり、
歩き慣れた町並を歩いてみた。








…何だろう、この胸のざわつき。


ざわざわしてチクッとしてきゅーってなる。
わーって叫びたくなって、
一瞬たりとも止まりたくなくて、
なのに急に立ち止まりたくなる。



京都から離れるんや、私…。


急に実感が湧いてきました。



18まで育った町を出る時は何にも感じることなくて
やっとこの町(この家)を出れる、
その喜びだけだったと思う。
今まで帰りたいと思ったことも一度もなかったし、
お金なくても高熱出しても大ケガしても心の病気で苦しんでも全く思わなかった。
そのことに対して私は自分を
きっと薄情なんだ、
どっかおかしいんだろうなって思ってた。
嫌いとか憎いとかそうゆうんじゃないと思うけど、
愛着とか思い入れとかが全然ないのです。
私の次に生まれたのが弟じゃなく妹だって判明した瞬間から
『本家の長女』って言われ続けて育ったことがその要因だとは思う。


―どうせ私はこの家から出ることは許されない。
―心底惚れた男と結婚することも許されない。


子供心にそう思わせる田舎のパワーってすごいぜ。




だから


今帰ったらもう二度と出れない。
絶対帰るもんか。



無意識とは言え、
その思いだけでがむしゃらに前だけ見て14年突っ走ってきたのかもしれんなー。



なのに、
いざ京都を離れることになったらこの有様。
30超えて初めて知りました、こんな気持ち。
ホームシック、
いや、
京都シック確実。
昨日なんていつもの帰り道で自転車乗りながら泣いてたし。
真っ暗な団地沿いで明らかに挙動不審のメガネ。



私の京都に対してのこの思いは何だ。


きっと
もう帰る場所ないんやなって頭でわかってるからやろな。


寂しさを表す形容詞「寂しい」
ここには収まりきらない何かがそろそろ溢れそうです。



で、次行くのが名古屋。
名古屋っつったら実家が近いわけですよ。
親戚の95%が岐阜と名古屋に固まってるわけですよ。
○○家の放蕩娘がやっと家に戻ってくる、
そう周りから固められるわけですよ。
すでにいろんな方面からの圧力アリ。
名古屋に異動することを知った知人が決まって言うのが
「実家近くなってよかったねー」


なんで?
なんでみんな口を揃えてそう言うの?
世間的にそうゆうもんなんかもしれんけど、
言われるこっちはものすごく重たいんです。




大好きな枡悟の奈良漬。

自分のために大奮発して一舟945円お買い上げ。
そして打田さんの福神漬と長芋わさび。
今夜はこれをアテにひとりで飲みます。



余りにも見慣れていつでもそばにあると思ってたこの景色、
歩いてたらポロポロ涙がこぼれてきて、
寺町も御幸町もよく見えなかった…




センチメンタルは漬物と一緒に冷蔵庫に詰め込んで
今から出勤。
京都桃子、行ってきます。